2015年12月29日
私は横浜鶴見で開業し35年になります。自分の専門のリウマチ、膠原病患者さんを集めつつ小児から老人まで広く診察させていただきました。自分が診察している老人は、家族での介護が出来そうで、急性の疾患がなく、老衰で最後を迎えかられる方は多く看取ることが出来ました。最近はその数も減ってきて年に3~5件くらいになりました。
開業当初はアメリカ留学後の影響があり、自己免疫病の自己抗体の解析に目が向き、特に原発性胆汁性肝硬変患者さんのミトコンドリア抗体、日本では当時全く知られていなかった、核膜孔に存在する抗gp210抗体、抗p62 complex 抗体を報告しました。また比較的稀だとは思いますが、抗p97/VCP抗体、またc型肝炎患者さんの1%前後にみられる抗LKM抗体も日本で初めてその存在を報告しました。しかしこれらの抗体は疾患特異性が高いとは言えますが、病気の原因とはならずその重要性は低いといわざるを得ません。
そんな折、2000年だったと思いますが、思いかけず58歳の女性が、関節リウマチ様の関節症状を持って受診されました。リウマチ因子陰性、CRP陰性でリウマチらしくなかったのでが、痛みが強くほぼ全身の関節に及んでいたので、早期の関節リウマチと診断し治療を開始しました。2か月たっても通常の薬剤では軽快せず、ふとこれは更年期の関節症状かと思い私の小学校同級生で日本更年期学会の初代会長を務めたKT先生に相談したところ更年期症状だと診断され、ホルモン補充療法を開始、2か月ですべての関節症状は消失しました。本当にビックリポンでした。これはいけないと思い、彼の指導を受け、約15年近くになりましたが、いまは関節リウマチ、シェーグレン症候群になりつつある症例を隠れリウマチ、膠原病と呼び、ホルモン補充療法で発症を防いでいます。
日本ほどホルモン補充療法が普及していない国は先進国の中ではありません。更年期症状で悩む女性が非常に多いのですが、診察する医師と診察を受ける女性のどちらもが気づいていない現状は悲惨です。これからも何とか普及に努めたいと思います。